第1章 新しい仲間

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「由紀恵ちゃん、どこの中学校なの?」  私が声を掛けた瞬間、ものすごい勢いで布団が捲れ上がり、由紀恵が顔を出す。 「うっせえんだよ!! 私が何部に入ってようが、どこの中学校に通っていようがお前には関係ねえだろ!!」  由紀恵の怒声がたいして広くもない病室の中に響く。そして、由紀恵は再び頭まで布団をかぶって姿を隠した。  私はさすがに諦めて自分のベッドに戻る。そんな私を、景子と優美が心配そうに見つめている。私はそんな彼女たちに笑顔を向けて、大丈夫だとアピールした。   それから三十分経っても、一時間経っても、由紀恵は顔を出そうとしなかった。いつもなら私たち三人の会話で溢れる病室も、シンと静まり返っている。本当にこのままでいいのだろうかと、私は首を捻ってしまうけれど、何か良い方策が思い浮かぶわけでもない。  そうこうしていると、優美が、 「私、ちょっと図書室に行ってくるね」  と言ってベッドを下りた。すると、普段は図書室に行くと言うとつまらなさそうな顔をする景子も、ここぞとばかりに、 「あ、ちょっと待って。私も一緒に行く」  と言って、立ち上がる。  二人は私に、『一緒に行こう』と視線で訴えるけれど、私は首を横に振った。このまま私まで図書室に行ってしまっては、まるで由紀恵を仲間外れにしているようだ。そんなことをしてしまえば、私だって気分が良くない。  私が図書室に行くつもりはないことを確認した二人は、キャッキャとはしゃぎながら部屋を出て行った。私と由紀恵だけが残され、部屋の中は余計に静まり返った感じがする。シンとして、少し耳が痛いような感じもする。  ときどきモソモソと布団が動くところを見ても、おそらく由紀恵は眠ってはいないのだろう。由紀恵の今の心境など正確にわかるはずもないが、もしも不安や恐怖でいっぱいになってあんな態度をとっているのだとしたら、私にもわからないことはない。私も入院したての頃は、不安と恐怖で半ば自棄(やけ)になり、慰めや励ましの言葉を受けても、ただ虚しくなるだけだった。  きっと、こういう時は無理に私の方から近寄らないほうがいい。由紀子が自然と心を開いてくれるまで、ただじっと見守っておいた方がいい。時間が経てば、私たちの距離は近づくに違いない。私はそんなふうに思いながら、布団の中に隠れる由紀子を見つめた。
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