第1章 新しい仲間
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第1章 新しい仲間

 病室の窓から見える景色、それが私にとって外の世界の全てだ。いや、私だって病気になって入院するまでは、他の人達と同じように、外の世界で自由に生きていた。中学校に通い、勉強して、友達と遊んで、習い事をして。だけど、半年たっても、私はこの狭い世界から抜け出せそうにない。  同じ病室には、小学四年生の景子けいこと小学校五年生の優美ゆみが入院している。四人部屋だけれど、今のところ三人で使っていて、一つのベッドは空いたままになっている。  私が入院してから半年間、その残り一つのベッドには、何人もが入院して退院していった。みんな、一週間かそこらで退院してしまうものだから、殆ど仲良くなる暇もない。いつまでも入院しているのは、私と景子と優美だけだ。  私たち三人の中で一番入院歴が長いのは景子だ。景子はもう二年もここに入院している。そのせいで、病院の中にはめっぽう詳しく、私も入院したばかりのときには、景子にいろいろと教えてもらった。どこに何があるかとか、どの看護師が優しいとか、注射が下手くそだとか、とにかくいろんなことだ。  景子はずっと入院している割には、明るくて前向きな性格をしている。『きっと病気を治して一日でも早く退院するんだ』というのが景子の口癖だ。そんな景子でも、治療のあった日はぐったりと疲れ切り、青ざめた表情で、何度も嘔吐する。そんな姿を見ても、私にできるのは、優しく背中を擦りながら、励ましの言葉をかけてやることくらいだ。  優美は私に後れること一ヶ月ほどして入院してきた。もともと内気だという優美は、なかなか私たちと打ち解けることもできず、よく一人で本を読んでいる。それでも最近は、私たちが声をかけると応じてくれるようになったし、優美の方から私たちに声をかけてくれることも多くなった。  学校では文芸部に所属している私は、優美とよく本の話をする。どんな小説が好きだとか、どんな作家が好きだとか、あの作品のどこがよかったとか、そういった類の話だ。本の話をしているとき、優美は本当にいい笑顔を浮かべる。きっと心の底から本を愛しているのだと、私はいつも思っている。  私たちは院内の売店で買った小説をよく交換して読む。体調がいいときには、院内にある図書館に行って、日がな本を読み漁る。そんなとき、景子がいつもつまらなさそうにしているのが多少気にはなるのだが。  季節は春。窓の外の桜の木は、淡いピンク色の衣を纏っている。そんな私たちの病室に、新たな入院患者がやって来た。
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