はつ恋

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―消しゴムのすり減りは恥じらいのある証拠。そう言われたのはいつだったけ。  背景に桜木と舞う花びらがあしらわれた原稿用紙に文字を連ねながらふと思った。 「あ」 『だったっけ』の最後の『っ』が抜けている。豆粒ほど小さくなった消しゴムで『け』の字を消す。ちょうどそのマスに収まった桜の花びら達は、地面に落ちて踏みに踏まれた時のように黒ずんでいた。せっかくの綺麗なピンク色も台無しになってしまう。だからこの原稿用紙は好きじゃない。
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