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 頭の中を埋め尽くさんばかりに考え込んでいると、カチッとケトルから音が聞こえた。お湯が沸いたようだ。スプーンで粉を溶かすように回しながらお湯を注いだ。時生は砂糖なしのミルク入り。伊吹はブラック。 「はい」  ソファで座る時生にカップを差し出すと、時生はそれをぎこちなく受け取った。 「まさか時生の方から会いに来てくれるなんて思わなくてびっくりしたよ。この一ヶ月、連絡もくれなかったのに」 「…それはお前もじゃん」  気まずそうに時生が零した。それで少しのあいだ妙な間ができた。付けっぱなしになっているテレビの音だけが部屋を満たす。口火を切ったのは時生だった。 「ごめん。ずっと仕事仕事で家にいても伊吹や賢太とあんまり話もしないで。仕事のトラブル続きで心に余裕もなくて、伊吹に当たってたところもあった。本当に、ごめん」  その言葉に、伊吹は面食らってしまった。時生は口先だけで謝ってはいても、どこかで俺は悪くないという顔をしていることが多かった。それが、本当に心から頭を下げているのだ。離れるという選択肢が、彼をここまでさせたのか。 「あたしも、ごめん」  気付いたら伊吹も目一杯頭を下げていた。
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