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少しでも時生に考えてほしいと言い聞かせるようなつもりで伊吹は話した。やめろよ、嫌だ、そんな言葉ばかりを聞く日々が辛かったから。
すこし待ってみても時生が口を開く気配はなかった。
「だからこれからどれくらいの時間がいるのかは分からないけど、夫婦を続けるにしろやめるにしろ、それをしっかり考えて話し合おう。じゃないと、また同じことを繰り返すだけだと思う」
やめる、と言ったときに時生がまた息を飲んだような気がした。
それでももう繰り返したくはないのだ。喧嘩の日々を。賢太が耳を塞ぎたくなるような日々を。
「わかった」
長い沈黙の後、時生はそれだけ言った。
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