クリスマスプレゼント

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 ふいにドアが勢いよく開き、赤いワンピースの女性店員さんが作業台の横を通り過ぎる。その瞬間、ふわりと薔薇の香りが鼻先に広がった。つい彼女を目で追う。彼女は少しカールのかかった後ろ髪を揺らしながら颯爽と歩いていた。長い黒髪がワンピースの赤と相まって一層艶やかに僕の目に映った。やはり彼女だった。  彼女の名前は、三谷 聖夜(のえる)さん。僕より二つ年上のフロア店員さんだ。見た目はクールビューティーな感じの美人だが、人柄はフランクで可愛らしいところがあり、多くの人から慕われている。僕もそのうちの一人で、口には出さないが、彼女のことを密かに下の名前で呼んでいる。  彼女が在庫棚の陰に消えるまで見届けると、今度は緑のパーカーの包装紙を破き始めた。全て破き終え、先ほどの作業を始めようとするとまた同じ赤いワンピースを着た他の女性店員さんが入ってきて、近くの棚からグレーのニットを取り、すぐに出ていった。別に赤いワンピースが流行なわけではない。
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