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いずれ静電気に殺されるんじゃないかと不安でならない。痛みを紛らわすため手を振っていると、近くでクスッと笑い声が聞こえた。振り向くと、聖夜さんがこちらを見て笑っていた。恥ずかしくてその場を後にする。作業台に戻り、段ボールから今度はケミカルジーンズを取り出す。包装を破いている最中に聖夜さんが戻ってきて、トートバックにピンクのブラウスを放り込む。
「まだ残業?」
聖夜さんはトートバッグの中の商品を確認しつつ、訊いてきた。
「はい。三谷さんもですか?」
「うん。最近の子は夢がないよねぇ。クリスマスイブ当日に自分で選んだ服をおねだりしてプレゼントしてもらうことが多いみたい。おかげで、店頭品切れで補充のために私は残業よ」
その言葉に自分もまだ20代でしょと思いつつ、尋ねた。
「なんで夢がないんですか?」
「だってクリスマスプレゼントはちゃんと届けてくれるかわからない方が嬉しいし、楽しくない?」
聖夜さんは振り向くと溢れんばかりの笑顔を僕に向けてきた。少しばかり動揺して僕は思わず顔を伏せる。聖夜さんは構わず続けた。
「子供の頃、サンタさんからプレゼントくるかなぁ? ってワクワクしながら待ってたでしょ? あんな感じが夢があっていいなと思うんだ。大人になった今でもワクワクしたいって思っちゃうし」
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