クリスマスプレゼント

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 クリスマスプレゼントを開けるように勢いよく包装紙を破いた。だが、子供の頃のようなワクワク嬉しい気持ちではない。今日、12月24日の内に、段ボール50箱に入ったプレゼントを処理しなければならないのだから。  僕は今年の7月から『ルーチェ』というアパレル店でアルバイトをしている。仕事内容は、レディースの店だという点もあって、店頭販売はなく、バックヤードでの商品整理業務が主だ。人見知りの僕にとってはありがたい仕事だが、まさかクリスマスイブにまで働かされることになるとは夢にも思っていなかった。  陽気なクリスマスソングが無言の空間を満たしていた。店のBGMが僕のいるストックルームまで聞こえてくる。包装紙の中にあった紺色のスウェットを取り出しながら、聴いたことはあるが曲名が思い出せない洋楽に耳を傾けた。作業台にスウェットをうつ伏せに広げ、曲のリズムに合わせて背中側に袖を折り込む。あくまでも普通に作業をしている風に見えるよう腕を曲に合わせてテキパキと動かすだけだ。ここは意外と人の出入りが激しいので、小躍りしながらたたみでもしていたら誰かに見られる可能性が高い。細心の注意を払いつつ、僕は作業を続ける。袖を織り込んだまま、曲の息継ぎに合わせて二つ折りにする。そして値札を取り出し、また曲の余白でプライスシールを貼る。その間、さりげなくサイズを確認し、心の中で「S」と唱える。曲の最後の単語と同時にSサイズのスウェットの山にそれを置いた。そしてまたリズムに乗って次々とスウェットを処理していく。
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