──を ──は、いけない

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 あそこに隠れるか。まさか中に人はいないよな。  扉の前に立った時、何か、文字が書かれているのが見えた。  暗くて分からない。スイッチを探そうとして、我に返る。  電気つけたら、ビルの外から丸見えじゃねえか。そりゃさすがにマズいだろ。  スマホのライトで、扉の前の文字を照らす。  そこには、赤い文字でこう書かれていた。 『この扉を 開けてはいけない』  思わず、ひっ、と変な声が漏れそうになった。  ペンキか? 文字から液が垂れ、気味が悪い。  箱の次は扉か。あいつら。ここまでするか?  そうだ、きっとこのビルに知り合いの奴がいて、協力してもらってんだ。  それにしてもなあ、誰がこの文字を消すんだよ。掃除のおばちゃんにわりいだろ。  ……そして、あの足音は、サークルの誰かだ。俺を脅かそうとして、ビルに入ってきたんだ。  開けちゃいけねえだと? 知らねえよ。そういわれりゃ、開けてみたくなるじゃねえか。  扉のノブをまわすと、すんなりとひらいた。   間を置かず、何かが、覆いかぶさってきた。 「うおっ!」  思わず声を上げ、抱きかかえて、それを支えた。  すぐに分かった。それは人間だった。 「……マ、マジビビッた。おいあんた、大丈夫か?」
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