1208人が本棚に入れています
本棚に追加
加藤殺しの犯人が石井?
「どういうことだ?」
「真取から連絡がきたんスよ。通報があって──自殺か他殺かって現場検証があって、そしたら容疑者として、オレの名前が挙がってるって……」
「話が見えねえよ。お前が容疑者?」
「正直ワケわかんないんすよ! なんでこんなことになってんのか!」
石井の言葉に、怒気が帯びる。
「落ち着け……るわけねえよな」
親友を殺された気持ちは分かる。裕二のことが頭に浮かび、強く拳を握りしめた。下腹部に力を入れて感情を押し殺す。
「正直、現実味がねえンすよ。さっきまでも、正直他人事っした。加藤が死んだことも自分がっ、容疑者になってることもっ」
電話の向こうで、ふぅふぅと、荒い吐息が漏れている。
言葉にすると、ほんやりしていた現状が実感を帯びる。実はよくある話だ。
「なんでお前なんだ? 真取はなんて言った?」
「情報漏洩になるから詳しくは教えられない。ただ、このままじゃあ、キミが容疑者になってしまうよ? って」
現場に石井を犯人と裏付ける証拠が落ちていた?
何がしたいんだ真取大輔。これもアイツの『案内役』としての行動なのか?
「犯人に心当たりは?」
「……見当がつかねえっス。正直な話、花林先輩も疑いました。騙された腹いせに、まずは加藤を手にかけたのかって」
「さすがにそこまでやらねえよ」
苦笑を浮かべつつも、犯人の可能性を絞る。
大輔や和達はねえか。加藤を殺す動機がない。裕二が殺されたようにな。
大輔の言っていた、石井が『ちょっと大変なことになってるよ』ってのは、このことか。
「……ワケわかんねえッスよ、ほんとに」
石井のつぶやき。
「なあ、犯人は【NG】じゃねえのか?」
シン。と、音無き音が発せられたような、一瞬の静寂。
スマホという機器を通じ顔を合わせることがなく、緊迫し、切迫した空気の中で、石井は明らかに、一度言葉を詰まらせていた。
最初のコメントを投稿しよう!