── を 信じてはいけない

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 港倉庫に向かう途中、駅前でバスを降りた。  目的はコインロッカーの裕二の形見だ。  ただの予感だが、このタイミングでしか、ここには来られないような気がしていた。  記憶できるものならその場で破棄すればいいし、持ち運びに邪魔なら、もう一度ロッカーに預けていけばいい。  目的のコインロッカーはすぐに見つかった。  十二番だったな。  ロッカーの形状は一番小さなタイプ、荷物はポケットに入るものならいいが。  暗証番号『一一九』を入力すると。カチリと音がして扉が開いた。  中には、緩衝材に包まれた、小さな荷物が一つだけ入っていた。 「なんだこりゃ?」    梱包を解いてみると、黒のUSBメモリが一本。何が入っているのか気になるが。手のひらでそれを握りしめる。 (裕二……)  殺されたはずの加藤は生きていた。もしかしたらあいつ(、、、)のように、本当は殺されていなかったら?  【NG】から送られた『誰も信じてはいけない』の言葉が頭をよぎる。  だがそんな邪推な疑いは、無散する。  分かってる。裕二は死んだ。認めたくない現実。  けど残してくれてたよな。最後の言葉。  おかけでたどり着けたんだ。俺なりの答えにさ。  このUSBメモリ内には、全ての真相が入っているのかもしれない。  だけどさ、ただ『正解』だけ教えられても釈然としねえよ。推理小説で犯人の名前だけ教えられても、意味がないように。  俺は決めたんだ。全てを暴いた上で、どうするのかを決めてやるって。  USBメモリをポケットにねじ込み、駅を後にする。  この戦いが終わったら、答え合わせしようぜ。なあ──裕二。
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