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駅からバスに乗り二つ先の停留所で降りる。徒歩で十分、港に到着した。
山積みにされたコンテナ。暗い時は気づかなかったが、どれも錆だらけだった。
昨日と同じNO四の扉をこじ開けて足を踏み入れる。照明はあるものの薄暗い。
「石井、花林だ」
ごく自然に語り掛けた。
「先輩」
積まれた木材の物陰から石井が姿を見せた。あまり眠れていないのか、憔悴した顔で力なく笑っている。
大き目の黒ジャケットとジーンズ。ややアンバランスな服装だ。
「先に来てたんだな。車が見当たらなかったから、まだかと思ったぞ」
一歩近づくと、石井が手でそれを制した。
「……一人っスよね?」
「ああ、もちろんだ」
両手を上げ丸腰であることを示す。
「すいませんス。こんなところ指定しちゃって」
「容疑がかかってんだろ? そこら辺の喫茶店でってワケにもいかねえよな」
「加藤殺しは本当にオレじゃないンすよ」
「俺でもねえよ。ただ加藤が死んだと言ってるのは真取だけだ」
「だったら! 真取がわざわざ電話してくる理由はなんスか! イタズラにしちゃあ度が過ぎた悪ふざけだし、加藤のスマホだって連絡がつかねえんスよ!」
突然、鬼のような形相で怒鳴り、ぜぃぜぃと荒い呼吸をする。
親友が殺されたんだ、無理もねえ。ただ──それでもなお、その血走った目には、別の意味で危うさが滲む。
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