── を 信じてはいけない

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「許せねえよな。俺も裕二をあんな目にあわせた奴を、許すことはできねえよ。ところでお前、真取とはどんな関係なんだ?」  予想してなかった質問なのか、石井は「えっ?」と少し戸惑った様子だ。 「いや、関係っつても、和達の先輩ってことくらいしか知らないスけど」 「真取が和達の先輩?」 「ええ、同じ高校って。ノリで連絡先交換して、その時は警官だって知らなくて……」  石井が真取との出会いを語る。話の真意を確かめる術はないが、内容は重要ではない。  ある、タイミングをうかがっていた。 「確かにアイツが警官だって言われても、信じられなかったな」 「ははっそうっスよね。あ、すいません、花林先輩。木下先輩も殺されたっつーのに、自分だけ取り乱しちゃって」  少し落ち着きを取り戻した石井。 「いや、こう見えて俺も、感情を抑えるのに必死なんだ。だから気にしなくていい」 「そうっスか」  ふぅっ。と石井がため息をつき、安堵と脱力を見せた。 「それでな石井、お前今、木下先輩も殺された(、、、、、、、、、)って言ったよな?」 「え? 言いました。木下裕二先輩っス」  びくっと身を震わせ、やや早口でまくしたてる。 「お前、なんで裕二が殺されたことも知ってるんだよ?」 「だって先輩、裕二をあんな目にあわせたって……」  あっ。と石井の表情が固まる。 「言ってねえんだよ、殺された(、、、、)とは。俺は裕二をあんな目に(、、、、、)と言っただけだ」 「あ、あんな目っていやあ、殺されたって思うじゃねえスか」    石井の返事には答えず、一歩前に出て距離を詰める。 「昨日の夜だ。【NG】って奴が、裕二を殺した」 「……電話じゃそんなこと、言ってなかったじゃないスか」 「先にそれを伝えてしまうと、お前が警戒すると思ったからだよ」 「警戒ってなんスか。木下先輩が殺されたって、それこそ真取か和達じゃないンすか?」 「それはねえよ」  真取は俺の隣で運転してたし、和達は俺たちと直前まで一緒にいた。移動時間を考えればまず不可能だ。 「だったら──」 「お前さ、ここに(かくま)ってんだろ? 【NG】を」 「……先輩、なに言ってんスか」  【NG】が裕二を殺した。これを伝えなかったのは、念のために打っておいた布石。  電話で先に伝えてしまうと、石井に気づかれてしまう恐れがあった。『自分が【NG】を(かくま)っているのがバレている? ここにいる場合じゃない』と思われたら終わりだ。  もちろんこれは、決定打じゃない。だが石井はボロを出した。 木下先輩も殺された(、、、、、、、、、)のに。と、本来ならば知る由のないことの自白。  だから、石井には昨日現れた【NG】のことは、あえて(、、、)口にしなかったのだ。
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