── を 信じてはいけない

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「左後ろか?」  動揺する石井の視線を追い、カマをかける。  石井は懐に手を入れた。抜いた手には銃が握られていた。  大きめのジャケットは、銃を隠すためか。  目を血走らせながら、荒い呼吸をしている。 「それか、それがアンタの『確認』したかったことかよっ!」  吐き捨てるようにつぶやき、石井は銃を構えて睨みつけている。 (モデルガン!? いや裕二を殺した銃だと考えれば、本物か)  両手を上げる。 「……おい、そりゃ反則だろ」  エアガンでもあれだけ痛いんだから、本物だったら死ぬよな。  どこか他人ごとのように考えてしまう。  この事態は予想外──でもない。  かといって、対抗策があるわけでもない。覚悟はしていた。  ここに来る途中、両腕とジャケット内に鉄板を仕込んでおいた。撃たれる直前、両手で顔を覆えば、少しは軽減できるかも、という狙いはあった。  実際の拳銃の殺傷能力は知らないしこれも気休めか。  だが、不思議と気持ちは落ち着いていた。 「……撃ったことあるのか?」  石井の拳銃を持つ手が小刻みに震えている。 「も、勿論スよ。オレです、オレが【NG】なんスよ。木下先輩をこの銃で殺したのは、オレなんスからね!」 「やるなら1発で俺を殺せ。できなきゃ俺がてめえを殺す」 「……ううっ」  命を懸ける覚悟で来ていたが、石井の命を奪いたいわけではない。彼が【NG】ではないことは分かっているからだ。 「ここで俺を殺しても、余計に逃げづらくなるだけだ。お前が匿ってんのは分かってんだ。蔵元美紀だろ?」 「……なんで!?」 「確証はなかった。決定的だったのは、お前の言葉だ。俺が加藤を殺したのは【NG】じゃねえのか? と聞いた時、お前はこういったよな。それはないっスよ。だってって」 「……!」  石井は一度、大きく目を開いた。月並みな言葉で表現すれば、しまった! の顔だ。 「だって"コイツ"。じゃなく。それは極めて近くにいる存在を指す言葉だ。昨日の夜から一緒にいたのか? もし加藤が殺されたのが昨日だとしたら、お前本当はこう言いたかったんだろ? それはないっスよ。だってコイツとは『ずっと一緒に居ましたから』って」  石井は観念し、うなだれた。  その手から銃が滑りおち、ガシャン。と音を立てて倉庫内に響く。  銃が落ちた音が合図だったかのように、隠れていた人影が姿を見せた。 「……寛治、恭介、ごめんなさい」  その人物は、ミステリーサクールの仲間であり、死んだはずの蔵元美紀だった。
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