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美紀からの生い立ちを聞いて、分かったことがある。
俺はどうして美紀を好きになったんだっけ、という疑問。
彼女自身の闇を覆い隠す、そのミステリアスな雰囲気に魅かれていたんだ。
「一つ聞きたいことがある」
美紀は分かってた。と言わんばかりに頷いた。
「石井、お前にもだ」
「オレも、スか?」
石井は意外そうに、顔をしかめた。
「あたしからでいい? 聞きたいことは、裕二を殺した動機?」
「それじゃねえよ。確かに動機は気になるが、お前にそれがあればな」
「……どういうこと!?」
それには答えず、まずは石井だ。
「石井、お前に聞きたい。それは"役"のことだ」
「え? あぁそのことっスか、てかそれ、今必要なことっスか?」
「むしろ今だからだ。石井は裕二が死んだことは、知ってるな」
「……ええ、まあ」
言いにくそうに口ごもり美紀を見た。自身が知るはずもないのに口を滑らせ、美紀の匿いがバレた。
「美紀、裕二を殺したのはお前の"役"だったとして、それはお前にバスタブで死んだフリを指示した奴と同一なのか?」
「……!」
驚きで大きく目を見開く。
「俺はこの事件の黒幕は、お前だと思ってない」
「何言ってるの? 【NG】はあたしだし、裕二だってあたしが殺したのよ?」
「残念だがそれは本当だ。けどな、俺は分からなかったんだよ。何で裕二が殺されたんだろうって。【NG】が誰だってことにばかり気をとられて、裕二が殺された理由までは、気が回らなかった」
「だから、それって動機ってことでしょ? あたしが裕二を殺したのは──」
「ハッキり言わせてもらうが、動機を語ろうとしている時点で、お前に裕二を殺す『理由』はねえ」
美紀の言葉を遮って、はっきりとそのことを告げた。
「……なんでそんなことが言えるの? 理由もなくあたしが、裕二を殺したっていいたいわけ?」
「もしもそういうことが動機なら、何で俺に見せつける必要があった?」
「えっ!?」
「裕二のアパートからご丁寧に中継までされて、俺は短い時間の中で選択を迫られ怒りで身を震わせた。【NG】を見つけだけして、最悪、殺すつもりだったよ。だけどそれこそが、黒幕の狙い──だったんじゃねえのか?」
そう考えれば辻褄があうのだ。
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