── を 信じてはいけない

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「……」  石井が落ちていた銃に手を伸ばし、構えた。  標的は俺。それ以上喋るな、そう警告しているのだ。 「石井、それはお前の"役"としての行動か?」 「美紀を守るために決まってんでしょ。オレ、先輩をこの場所に呼んだのは、加藤殺しと美紀の罪を被ってもらおうと思っていたからなんスよ」  石井の目の奥が、(くら)く濁っている。  「そうだろうな。つか考えないほうがおかしいだろ」  覚悟がねえとさ、こんなところに無防備でノコノコ姿を現わさねえよ。  双方、心の内までは知る由もないが、俺は美紀がここにいると確信を持ち、口角を釣り上げた。石井は俺に罪を擦り付けるつもりで、同様に口角を釣り上げていたのだろう。  石井の銃を持つ手が、小刻みに震えている。 「駄目よ寛治、恭介を殺しちゃったら、"あの人"が──」  美紀の口から、真の黒幕の存在が漏れた。 「……っ」  石井の震えがピタリと収まった。 (マズいな) 一見、冷静さを取り戻した石井だが、反面、俺の鼓動が跳ね上がる。 「石井、少し考えてみろ。俺に罪を被せるつもりなら、その相手を殺しちまったら何にもならねえぞ。俺の死体を真取に差し出して、コイツが全ての犯人です。とでも言うつもりか? 罪の上乗せだろ」  「……そうスね。すいません、ヤケになっちまって」  本当の意味で冷静さを取り戻した石井は、やっと銃を下ろしてくれた。 (今のは、本気で焦ったな)  ただ同じ男として、石井の気持ちは、わからなくもない。  さらに意外な行動に出たのは、美紀だった。  石井の手から銃を取り上げると、今度は俺に投げてよこした。
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