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◇
「寛治? そこにいるの?」
美紀の目から光が消えかけている。
「ああ、オレはここにいる。全部オレが悪かったんだ。ごめんな、美紀」
「……あのね、寛治、あたし実は……」
「美紀から付き合おうって言ってくれたのは、"あの人"の指示だったことは知ってる」
「そう。ごめん、ごめんね……寛治」
「いいんだ。最期にお前と一緒にいられるだけで、オレは幸せだ」
「まだ死にたくないなぁ。けど、これは罰よね。裕二を殺した罰」
「罪も罰も、一緒に被るさ」
2人は手を握り合い、身を寄せ合う。
「……最初から、あなたを本気で好きになれば、よかっ……た」
傍らで美樹が、眠るように目を閉じた。
「美紀。オレも、すぐに──」
乾いた発砲音が倉庫に響き、そして静寂が2人を包んだ。
◇
倉庫を後にした俺は──和達の運転する車の、助手席に乗っていた。
「ご無事で何よりです」
「……助かったよ。『俺は』な」
まさかこの男が現れるとは思っていなかった。
倉庫前にいたのは有里茜。和達は車で轢くつもりだったらしいが、素早く身を隠した有里は、姿を隠し逃走したようだ。
「有里の脱走は私の失態です」
「俺は、お前が解放したのかと思ってた」
皮肉を込めた一言だが、和達は意にも介さず、
「私がそれを行う理由はありません」
と答えた。
走り出した車は、二車線で見通しのいい国道に出た。
突然倉庫前に現れた和達。こいつを信用したわけではないが、助けてもらったことは事実だ。
「この車……」
「ええ、先日でしょうか。大輔さんが使用されていたものです」
やっぱりか。有里の拉致から助けてもらった後、乗せてもらった車だ。
「なあ和達、なんで俺を助けた? これも"あの人"の指示か?」
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