── を 信じてはいけない

18/19
前へ
/237ページ
次へ
◇ 「寛治? そこにいるの?」  美紀の目から光が消えかけている。 「ああ、オレはここにいる。全部オレが悪かったんだ。ごめんな、美紀」 「……あのね、寛治、あたし実は……」 「美紀から付き合おうって言ってくれたのは、"あの人"の指示だったことは知ってる」 「そう。ごめん、ごめんね……寛治」 「いいんだ。最期にお前と一緒にいられるだけで、オレは幸せだ」 「まだ死にたくないなぁ。けど、これは罰よね。裕二を殺した罰」 「罪も罰も、一緒に被るさ」  2人は手を握り合い、身を寄せ合う。 「……最初から、あなたを本気で好きになれば、よかっ……た」  傍らで美樹が、眠るように目を閉じた。 「美紀。オレも、すぐに──」 乾いた発砲音が倉庫に響き、そして静寂が2人を包んだ。 ◇  倉庫を後にした俺は──和達の運転する車の、助手席に乗っていた。 「ご無事で何よりです」 「……助かったよ。『俺は』な」  まさかこの男が現れるとは思っていなかった。  倉庫前にいたのは有里茜。和達は車で轢くつもりだったらしいが、素早く身を隠した有里は、姿を隠し逃走したようだ。 「有里の脱走は私の失態です」 「俺は、お前が解放したのかと思ってた」  皮肉を込めた一言だが、和達は意にも介さず、 「私がそれを行う理由はありません」  と答えた。  走り出した車は、二車線で見通しのいい国道に出た。  突然倉庫前に現れた和達。こいつを信用したわけではないが、助けてもらったことは事実だ。 「この車……」 「ええ、先日でしょうか。大輔さんが使用されていたものです」  やっぱりか。有里の拉致から助けてもらった後、乗せてもらった車だ。 「なあ和達、なんで俺を助けた? これも"あの人"の指示か?」
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1208人が本棚に入れています
本棚に追加