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目を覚ましてすぐには、状況を把握できなかった。
ざらりと冷たいコンクリートの上に、仰向けで寝かされていた。
暗い空を見上げたまま、そうか、これは夢なのだと、目を閉じた。
五秒数えて目を開く。夢ではないらしい。
現実はコンクリートの上で、空は暗いままだった。
「……ここは」
現状が把握できないまま、花林恭介はつぶやいた。
体を起こして辺りを見渡す。コンクリートの地面の先に、安っぽい金網のフェンスを越えて、そこ、かしこで光るネオン看板。
遠くで電車の音が聞こえた。
ビルの屋上のようだ。
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