──を ──は、いけない

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 今日は、大学サークルの歓迎会だった。  男一人と女一人の新人を交えて、男五、女二の合計七人。会場は、よくある大衆居酒屋。  新人の、男のほうは、いわゆる草食系男子。女は眼鏡をかけた、地味なオタクっぽい女。二人とも十八だから、俺の二つ下の後輩。  サークル名は、ミステリー研究会。通称、ミステリーサークル。  活動そのものがミステリーなサークルで、ミステリー好きが集まり、映画に小説、漫画など様々な分野を語り、遊びにいったり飲みに行ったり、が主な活動内容だ。  一次会が終わり、幹事をしていたダチの木下裕二(きのしたゆうじ)が、二次会はカラオケだと言い出したので、俺は遠慮しておくと断った。  アパートまでは徒歩で十五分。  一人の帰り道、公園のトイレに寄ったな。  それから──どうしたんだっけ?  途中までハッキリしていた記憶が、急に曖昧なものになった。  酔っぱらってこのビルに登った? いや、そこまで飲んだ覚えはねえ。 「くそっ!」  苛立って、たまらず立ち上がった時、左手になにか、違和感があった。
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