1208人が本棚に入れています
本棚に追加
座っている時は気づかなかったが、手首に何か巻き付いていた。
銀の輪だ。一瞬、ピンとこなかったが、それは手錠だった。
手錠は柱や地面に繋がれているわけではなく、手は簡単に持ち上がった。
手錠の先に、小さな箱が付いている。
「なんだ?」
銀色の金属製の四角い箱で、てのひらに収まる程度のサイズだ。
全く覚えがない。
誰かのイタズラだろうか。所属するサークルはミステリー研究会。
居酒屋で、誰かがこっそり俺の手に手錠を?
いや、違うか。居酒屋でこんなモンつけられりゃ、さすがに気づくわ。
ん? ふと気づく。左腕に何か書かれている。
記号? いや、文字だ。それから先は、ジャケットの袖に覆われていて見えない。
袖を一気にまくり上げて左腕を見た。
そこには、黒の文字で、皮膚に直接、こう書かれていた。
『この箱を 開けてはならない』
最初のコメントを投稿しよう!