──を ──は、いけない

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 座っている時は気づかなかったが、手首に何か巻き付いていた。  銀の輪だ。一瞬、ピンとこなかったが、それは手錠だった。  手錠は柱や地面に繋がれているわけではなく、手は簡単に持ち上がった。  手錠の先に、小さな箱が付いている。 「なんだ?」  銀色の金属製の四角い箱で、てのひらに収まる程度のサイズだ。 全く覚えがない。  誰かのイタズラだろうか。所属するサークルはミステリー研究会。  居酒屋で、誰かがこっそり俺の手に手錠を?  いや、違うか。居酒屋でこんなモンつけられりゃ、さすがに気づくわ。   ん? ふと気づく。左腕に何か書かれている。  記号? いや、文字だ。それから先は、ジャケットの袖に覆われていて見えない。  袖を一気にまくり上げて左腕を見た。  そこには、黒の文字で、皮膚に直接、こう書かれていた。 『この箱を 開けてはならない』
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