──に 会ってはならない

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 車は大通りに出た。  不審な車が尾行してきても、大通りのほうが有利だそうだ。 「なぜだか分かる?」  突然の問題。 「裏路地は、前後を塞がれると逃げられないし、目撃者にも通報されにくいからだろ」 「正解。さっきのハイエースの仲間がいないとも限らないから念のためね」 「警戒しとかなきゃな」   と言ったものの、俺は上の空。走行中の車という安心から、完全に油断していた。 「大学へは行かなくていいの?」 「それどころじゃねえよ。むしろ行くなら、警察かなって思う。正美さんは、どう思う?」  ちらりと顔をうかがう。運転中ということもあって、前を見たままだ。 「そうねぇ、確かに警察に駆け込めば、身の安全は保護されるでしょうね。私ならしないけど」 「人が殺されてるのにか!?」 「美紀ちゃんの件は、警察に通報したでしょう? ハイエースの男たちは今頃、事情聴取でも受けてるわよ。でもね、アンタの話を聞く限り、謎は一つも解けてないの。  真実を話す。と言われて、アンタはあのアパートに行った。でもその相手……美紀ちゃんは、殺されていた。彼女を殺したのは誰?」 「ハイエースの男たちだろ?」 「手を下したのは彼らかもしれないわ。でもね、その裏には、黒幕がいると思うの」 「黒幕?」 「指示を出していた奴よ。アンタを屋上に置いたり、追ってきた殺し屋? を雇ったり、美紀ちゃんを殺すよう指示した人物」 「……」 「心当たりない?」 「あるわけねえだろ。人に恨まれる覚えもねえ」 「気づいてないのは、本人だけってこともあるわよ」 「皮肉か? 正美さん」 「大真面目に言ってるの」    車がガクン。と大きく揺れた。交差点を曲がっただけだが、正美さんの苛立ちが運転に現れていたのかもしれない。 「……わりい。とりあえず心当たりはない」 「そうでしょうね。恨みのある人物なら、真っ先にアンタを狙うでしょうし」  言われてみればそうだ。
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