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あえて手錠と箱のことに触れなかったのは、向こうの出方を見るつもりだった。
手錠は? 箱は? とか言われたら、なんでお前、そのこと知ってんだ? 俺は手錠も箱も言ってねえよ? まるでどこかで見てたみたいだな? って、ドヤ顔で突っ込んでやる。
誰かがボロを出さねえかな。今のところ既読は、裕二だけみたいだが。
しかし……ここはどこだ?
フェンス越しに見える街並みからは、現在地を把握できない。
目印は、遠目に見える女性アイドルグループの看板と、隣接するビルに立体駐車場があるくらいだ。
監視してるとすりゃ、立体駐車場の屋上からか? まあいいさ、ゲームに付き合ってやりますか。まずは、ここから出るのが先決だ。
フェンスが一部、無い部分があった。
壁沿いに下へ続く階段が続いている。その先に、ビル内へ続く扉が見えた。
まさか扉にカギがかかっていることはないよな。不安とは裏腹に、ドアはあっさり開いた。
中に入ると、さらに下に続く階段が、ジグザクの折り返し地点を交えて、下に続いていた。
ビルの非常階段だな。一番下までいけば、出口にたどりつけそうだ。
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