──を ──は、いけない

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 電気が通っていないのか、薄暗い。スマホのライトで壁を照らすと、九Fの表示が見えた。 (あいつら、わざわざ九階まで俺を運んできたのか?)  階段の底は、静寂と闇に閉ざされていて、先がうかがえない。はるか地の底まで続いているようだ。大げさか。ここは異世界じゃない。  慎重に階段を下る。ここが何のビルか知らないが、管理人に見つかったら怒られそうだ。  静かな空間に、自分の足音だけが響く。不気味だな。心地よくはない。  1階降りるたびに、ビル内に続く扉があった。  テナントが入っているのか空きビルか知らないが、わざわざ開けて確認するのはリスクしかない。素通りしながら下へ進む。    手錠と箱が地味に邪魔だ。この箱、しっかりした造りしてるな。何が入ってんだ? 重さ自体はほとんどない。振ってみた。音はしない。空っぽか?  箱に注意が向いていた時、どこかで、ギィ~ッと、軋むような音が聞こえた。  音が反響してわかりにくいが、多分、下のほうからだ。  バタン。扉の閉まる音。それから一呼吸おいて、カツーン、カツーン、と、足音が響きはじめた。
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