24人が本棚に入れています
本棚に追加
「シオナ、起きて。」
抑えた声に起こされて、シオナは慌てて起き上がる。
「おはよう。私寝坊してしまった?」
反射的にそう返すと、ノアラが微かな笑い声を立てて首を振った。
旅に出てからずっと、スセンとカラトと3人で過ごして来た所為で、起き抜けに2人ではない誰かがいるのは何だか違和感がある。
「交代の時間よ。ジリアもまだ寝てるし。」
隣を見ると、ジリアはまだ幸せそうに寝息を立てて眠っている。
「ジリアはちょっと寝起きが悪いのよ。気合いを入れて起こすから、そこ代わってくれる?」
言われてシオナは天幕の中を入り口に向かって移動する。
天幕の入り口の向こうはまだ薄暗く、日の出前の時刻のようだ。
天幕の入り口を潜って外に出ると、焚火の前のカラトがこちらを向いた。
「おはよう、シオナ。」
「おはようございます。」
早朝の森は肌寒く、虫の声が遠く響き渡っている。
「カラトさん、スセンは?」
「流石にまだ寝てるだろうな。」
習慣のように訊いてしまってから、いつもと夜番が違ったことに思い至った。
「そうでした。今朝は、スセンに私の作った朝ご飯食べて貰えるかな。」
照れ隠しのようにそう続けると、カラトが笑って手を振った。
「頑張れ、それじゃ俺はもう一眠りしてくるから。」
男子用の天幕の方へ向かって行くカラトと入れ替わるように、リトラが起き出して来た。
「おはようシオナ。朝は冷えるね。」
縦笛吹きのリトラは、シオナやジリアと同い年だが、中性的な顔立ちと、声変わり前の高い声で、構えなく女子の会話にも入ってくるので、ノアラやジリアも男子扱いせず、どんな会話にも混ぜている節があった。
リトラと2人焚火に当たっていると、ノアラと半分寝ぼけたようなジリアが天幕から漸く出てきた。
「シオナは料理は出来るの?」
リトラの問いにシオナは普通に頷く。
「うん。育った家では6歳くらいからは私がご飯作ってたから。」
それにリトラは意外そうな顔をした。
「シオナはお嬢さんなのかと思ってた。だってほら、司祭様のお弟子さん? 彼が君のこと凄く気遣ってる感じだったから。」
シオナはそれに苦笑する。
「スセンは、誰にでも優しいよ。」
答えたシオナに、リトラは軽く首を傾げたが、それ以上は追求してこなかった。
最初のコメントを投稿しよう!