scene18*「だいすき 」

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scene18*「だいすき 」

あたしのハートにざっくりと。 もう刺さっちゃって、すっかり取れないんだよね。 【18:だいすき 】 自分の中で友達だと思ってたら、「好きな人」に変わってしまったようだ。 あたしの気持ちのコップは溢れだしてしまったのか……つまりは好きになっちゃったってこと。 誤魔化しようのきかないくらいに。 「責任とってよ」 「え?」 きっかけは……もう、いつだってきっかけだよ。 たまたま席が近くて、 たまたま話があっていっぱい弾んで、 たまたま「遊ぼうか」ってなって遊んだりして、 色んな事相談できる相手もこいつなわけで…… 色々と知りすぎたら、こいつの良い部分に惚れてっちゃってたんだ。 言葉が、笑顔が、仕草が、 いちいちあたしのハートに突き刺さって、 この短時間にどんどんとグイグイ深くなってく一方で、 もう取れないくらいに重症を追ってしまった。 「もうお嫁にいけない」 「なんだー?また気まぐれ病かー?」 学校帰り、いつもは隣で歩くけど今日はちょっと違って、隣で歩く気持ちにはなれなくて半歩下がってついてくみたいに歩いてた。 隣には……こいつ、気の合うマツダだ。 今日の昼休み、マツダの癖して可愛い一年生の子に告られてやんの。 今日の5限とか困りつつ嬉しそうにして授業受けてやんの。 その告白を見ちゃった瞬間、もうズキンズキンと音をたてるみたいに、あたしのハートに刺さってる何かが一層食い込んで倒れるかと思った。 そしてその瞬間、コップが溢れたことに今更ながら気づいてしまった。 恋の病は思ってたよりも深刻で重症。 毎日何気なくこうして帰ってたけれど……あたしはどうして今まで自分の気持ちに気付かなかったんだ。 「付き合うの?」 「はぁ??」 「今日のお昼休みに話してたあの子と!」 「おまっ……見てたん!?」 「見たくて見たわけじゃねーっつの!見ちゃっただけ!!」 半分本当で半分嘘。 途中からガン見してたっつの。 「断ったけど」 「なんで!!???」 思わず立ち止まる。それに気づいた奴はうざったそうに振り返った。 「なんでって……そりゃ……」 「そこで止まらないでよ。気になるんですけど」 「いーからいつまでそこで止まってんだよ。そんな奴には教えん」 あたしは小走りに隣に並んで、覗き込むようにして顔を見た。 なんで、なんで、どーして? 半分嬉しいような……でも好きな子が誰なのか知るのが怖い。でも知りたい。 でも本当の事聞いたら、ショックすぎてもう心臓壊れちゃうかもしれない。 すっかりと“でも”の堂々巡りだ。 ドキドキしながら続きを待ってると手が触れて、何かが絡んだ。 あったかい、指先だった。 「もーいるし」 え、何、なにこの展開。 なんでこんなに調子いいわけ。 なんだこれ。 突然の手繋ぎ指絡めに頭がついていかない私に、マツダはさらりと言った。 「だって、責任とってって言われちゃったし。どこかの誰かさんに」 うわ、うわ、放心状態で頭が真っ白だ。 何かがあたしのハートをとうとう貫いたのか、壊れちゃったみたいにとたんに顔も胸も熱くなり、音もドクドクしはじめて…… 「ナントカ言ってくんねーの?もしかして俺だけ?俺、ひょっとしてスベッた?」 「……もう、取れないの」 「は?」 あたしは壊れそうな心臓で、息をするのがやっとなくらい緊張してたけど、勇気を絞った。 「なんか変なのがあたしの中から取れなくて困ってるの」 「胸のあたりが苦しいし、なんにも考えられないし、」 「そうなんの、あんたのこと考えるとなるの」 「だから、責任とってよ」 顔なんか恥ずかしくて見れるわけがない。 だって本当こんな気持ちなんだもん。 どんどんあたしの中に刺さってきて手遅れなの。あたしはギューっと強く握った。 すると「いてーよ」ってちょっと笑いながら、マツダも強く握り返してくれた。 「ところで、取ってくれるの?」 「……やだね」 「何それ」 「まーこれからも宜しくって事」 これはずっと抜けそうにないかもしれない。 あたしのハートに刺さってる「すきだ」って気持ち。 これがこの先あたしを振り回してくんだろうけど、でもすっごく大事なものだから抜けなくていいのかなって思った。 あたしに刺さった、君を「すきだ」という気持ち。 ( ドキドキしてて欲しいから、そんなん抜けなくたってよくね?なんて、思ってても言えねーよ。 )
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