scene1*「お日さま」

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scene1*「お日さま」

天然なとこが、可愛いんじゃね。 そう言われるの、嬉しいかも。本気で初めてそう思った。 【1:お日さま 】 私のランチ時間はいつだってにぎやかだ。 お昼ごはんはいつも友達のユカリンとナオちゃんと教室でお弁当を食べている。 一つの机に椅子3つを寄せて、くだらない話で大笑いしながらなので、食べているのか喋っているのかどっちがメインなんだか分からないくらいに楽しい時間。 ユカリンもナオちゃんも、優しくてしっかりしているお姉ちゃんみたいな性格で、ぼんやりした私はいつも二人に引っ張っていってもらっていると言っても過言ではないくらい。 そのくらいに、私は人にも家族にも「ハルって本当に天然だよね~」ってよく言われる。 いじられるのにも背が低いってのも要素の一つらしく、マスコットキャラ扱いに近いかもしれない。 それをひっくるめてみんなに仲良くしてもらえるのは、なんだか自分の居場所があるみたいで嬉しいってのが正直な気持ちだ。 秋晴れが続くぽかぽかした日差しが、窓際の私の席を温める。 お天気の良いランチ時間ほど幸せなことはない。 実にカフェオレ日和だなぁなんて思いながらドリンクパックを無心にちゅーっと吸ってたら、たまたま教室に入ってきたナカハラ君と目が合った。 彼の片手にはパンとジュースがあったから、購買に行ってきたんだろう。 私は普通に見てただけなんだけど、失礼にもナカハラ君は「プッ」とふき出した。 それに気付いた私は思わずナカハラ君に抗議をした。 「ナカハラ君、なんで笑うの~~~???」 「わりぃわりぃ!」 「人見て急に笑うとか失礼だってば」 ユカリンやナオちゃんは「え?」というような反応をしている。 ズカズカと歩いてくるナカハラ君を、教室にいる皆は見たけれど、すぐに視線もおしゃべりも戻した。 私の席の斜め後ろの席にいるナカハラ君は自分の椅子をユカリンとナオちゃんの間に持ってきて、バリッとクリームパンの袋を開けた。 どうやら一緒にランチをするらしい。 「だってあんまりにもホケーッとしてたからさぁ~」 「普通にしてただけじゃんか~」 「いやいやいや。ありゃ普通の奴には醸し出せないオーラが……」 「あたしは普通だってばー!」 友達二人が困ったみたいにクスクス笑って、絶対に二人もナカハラ君と同じ事思ってたに違いない。 もしかして私バカにされてるのかな?気付いてないだけなのかな? こういう時、ちょっと思っちゃう。 ちょっと不機嫌そうにカフェオレを飲むと、もう残りが少ないのかストローから「ジュルルル」と空気が混じった嫌な音がした。 私、実はナカハラ君のこと、ちょっとだけ意識してるんだよ。 最初同じクラスになったばかりのときは“ちょっぴり苦手”だった。 話すまでは何考えてるか分かりづらくて、背だってすごく高いから私とは物理的な距離も感じるしでとっつきづらく見えたから。 でも仲良くなるうちにナカハラ君の絶妙な会話の間とか、 さりげなく声をかけてくれたり気にかけてくれる優しさとか、 気がつけば何だかいいなって想うくらいになってた。 本当は私の事をもっと知ってもらいたいし、好きになってもらいたい。 だけど、何のとりえもないのが自分でも分かるから、友達ポジションから離れるのが怖い。 「でもさぁ~」 そう言い掛けたナカハラ君を見た。 ばっちり。 ってくらいに目が合って、 「そーゆー天然なとこが、可愛いんじゃね」 この言葉は私だけじゃなくユカリンとナオちゃんもビックリして、思わず目を丸くした。 ナカハラ君は言いたいことだけをさっさと言ってしまったら、忘れたかのようにバクバクとクリームパンを食べて、廊下からの友達の掛け声にニコニコと普通に返事しながら手を振ってた。 私は、 「ナカハラ君こそあたし以上にもっとずっと天然だよ」 そう言いたかったけど、友達の手前飲み込んだ。 体がぽかぽかするのは、秋の日差しのせいにしておこうと思った。 ( 鈍いのはあなた。 )
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