78人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
急に黙る少年は何も肝心なことは言わず、私の左目の下の絆創膏に手を伸ばしたから。
「やめて」
「気にするなよ。たかが泣き黒子だろう?」
いくつもある心の傷なら生乾きのままだ。冷たい彼がつけた傷もまだ、癒えていない。悲しいことに私が彼につけた傷も同じこと。
「関係あるよ。俺の後輩でもあるんだから」
怖い顔。見なくても怒っていると分かる。声の調子で、仕草で。そんな目をしないで。目も合わせられず、私は唇を噛み、震えた。これは……嘘泣き。思い出して、泣くから。
「いつまで被害者面してメソメソ泣くの?」
「黒木のせいになんかしてやらないから!」
抱き寄せた腕を私は拒むこともできない。罪悪感で胸がいっぱいで、倒れそうだ……。
中学の時、自然消滅したボーイフレンド。黒木涼を、友達と呼んでもいいのだろうか。だって、出会いから、あやふやだったから。
最初のコメントを投稿しよう!