コンプレックスの泣き黒子

2/2
78人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
 急に黙る少年は何も肝心なことは言わず、私の左目の下の絆創膏(ばんそうこう)に手を伸ばしたから。 「やめて」 「気にするなよ。たかが泣き黒子だろう?」  いくつもある心の傷なら生乾きのままだ。冷たい彼がつけた傷もまだ、()えていない。悲しいことに私が彼につけた傷も同じこと。 「関係あるよ。俺の後輩でもあるんだから」  怖い顔。見なくても怒っていると分かる。声の調子で、仕草で。そんな目をしないで。目も合わせられず、私は唇を噛み、震えた。これは……嘘泣き。思い出して、泣くから。 「いつまで被害者面してメソメソ泣くの?」 「黒木(くろき)のせいになんかしてやらないから!」  抱き寄せた腕を私は拒むこともできない。罪悪感で胸がいっぱいで、倒れそうだ……。  中学の時、自然消滅したボーイフレンド。黒木(リョウ)を、友達と呼んでもいいのだろうか。だって、出会いから、あやふやだったから。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!