スタコラサッサッサのサ♪

2/2
78人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
「冬眠中のクマさんじゃないんだからさあ、そんな暗いところにいないで、出ておいで」  私は顔色を変えずに手早くノートを閉じ、筆記用具と手に持ち、読みかけの本も閉じ、機械的な(ぎこちない)動きで、一目散に、尻尾を巻いて、逃げようとしたのだけれど。 「お嬢さん、お逃げなさい、スタコラ、サッサッサのサ、スタコラ、サッサッサのサ♪」  そうなのだ。こいつはいつもこうなのだ。いきなり、童謡を歌い出し、笑わせてくる。クールな女を演じている私には、脅威的だ。 「と、こ、ろが! クマさんが、後から!」  しかも……歌いながら……手拍子をして、ご存知、『森のクマさん』の民謡の通りに、後から……ついてくる……ではないか……。  私の名前は、森野(もりの)キサ。お分かりですね。からかい混じりの子供じみた悪戯を仕掛けて愉快そうな悪ガキに、()(まと)われています。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!