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彼女はストレートの黒髪で、学校指定のラフなニット姿の子も多い中、紺色のブレザーをいつも着用している。
そしてそれはきちんと上まで全てのボタンが閉められていて...俺のように適当なヤツとは人種が異なる感じがして、ちょっと話し掛け辛い雰囲気。
真面目が過ぎる感じもするが、向こう側が透けて見えそうなほど真っ白な肌も、長いまつげで縁取られた色素の薄い大きな瞳も、さくらんぼみたいにぷっくりとした唇も、ビジュアル的には俺の好みのストライクゾーンど真ん中。
ちらりと盗み見た本のチョイスもかなり俺好みで、一度切っ掛けさえ得られたならば、きっと話が合うに違いないだなんて、勝手に思っている。
...と言っても俺と彼女は、単に毎週金曜に図書館でただ顔を合わせるだけの、知り合い以下の関係。
彼女の方は俺の存在なんて、気付いてすらもいないのかも知れない。
そんな風に考えて、少しだけ落ち込みかけたその時、彼女が現れた。
...うん、今日も可愛い。
いつも一人で図書館を訪れる彼女は、基本無言且つ無表情。
なのでその笑顔を俺は、まだ見たことがない。
笑っている顔、見てみたいなぁ...。
そんな風に思った、その瞬間。
...彼女はふわりと、微笑んだ。
か、可愛い...っ!!
何あれ、花が咲いたの?
ふわって...ふわって笑ったぞ?
ぬぉーーっ、それにしても何だこの、ミラクルっ!!
...もはやこれ、運命じゃね?
本棚の影に隠れ、こっそりガッツポーズ。
これで彼女の髪がゆるふわウェーブの茶髪だったら、まさに理想の女子なのになぁ...。
その姿を想像し、かなり萌えた。
でもまぁ、真面目な彼女の事だ。
それはきっと、土台無理な話に違いない。
...それに話をした事もない俺がそんな事を彼女にねだるだなんて、不審者以外の何者でもないしな。
そして結局いつものように何の切っ掛けも得られぬまま、その日も終わった。
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