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「名前は?まだ聞いてなかった」
「桂花(けいか)」
「桂花。いい名前だね。
だからここが好きなんだね」
その問いの意味が分からず、
首を傾げていたら、
彼はとても優しく嬉しそうに笑ったんだ…
その笑顔を見て
私の心臓が騒々しく音をたてた。
いろんな話をした。
言葉が溢れ出していた。
親にも言えない秘密も…
彼はずっと聞いてくれていた。
私はそれから毎日のよう森へ行き話をした。
周りは金木犀の花で溢れかえる時期になり
そこは金色の海の様に見えた。
いつもと同じ様に話をしていた。
「帰るね。また明日ね」
「またね」
私はバイバイと手を振り
彼に背を向けて歩き出した。
少し離れたときに彼は言った。
「 寂しくなったら…
どうしようもなく寂しくなったり
傷ついたらまたここで話をしよう。
ずっと一緒に……約束するよ。」
その言葉に私は「うん」と返事をしてまた手を振った。
次の日、彼は現れなかった。
次の日もその次の日も…
会うことはなかった。
あれから30年経った。
その間、話をしたくて
2回森に行ったけど
彼には会えなかった。
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