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[ずっと行きたいと思っていた美術館の中へ最愛の彼と入る。
展示スペースへ向かうと、まず目に飛び込んできたのは、大きな額縁だった。
その額縁の中には大きな蝶が描かれていた。
まるで生きているかのような躍動力、生命力を肌で感じた。鳥肌が立った。
額縁を外せば今にも飛び出してきそうな蝶の生命力。
目の前にあるのは紛れもなく蝶の絵画。
しかし、標本かと見紛うほどに息を呑む素晴らしい作品だった。
蝶の絵画は大きいものから小さいものまで様々で、
蝶の模様も繊細かつ鮮やかな色使いに一瞬にして目を奪われた。
本物の蝶にしか見えないその表現力は、彼にしか出せないものだと思った。
あの鮮やかな色合いをどのように出しているのかと、
思わず考え込んでしまった。]
「…終わった?」
「うん、終わったよ。ごめんね、長々と」
「…もしかして、考えてた?」
「え?今考えて言っただけだよ。どうかしたの?」
「いや、前から見てたようなそぶりで言うからさ…驚いた。本当に、今考えて言ったのか?」
「うん、そうだよ。そんなに信じられない?」
彼女はふふ、と笑った。
「…すごいな」
僕は、心底感激した。
ほんの数分見ただけで、
こんなにも素晴らしい描写をあっという間に作り上げることが、
果たしてできるだろうか。すごい、の一言しか出てこない。
やっぱり彼女には、センスがある。
「それに、最愛の彼と、ってとこがいいな」
「ふふ、もうひろくんったら」
彼女は照れながら、僕の手を引っ張った。
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