第1章 夢のノロッコ号

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「何だよ、それ。曖昧だな」 「ごめん、でも、ただそう思っただけで…」 それは、僕に対しても同じだ。 僕への想いに限らず、自分の思ったことをもっと口にしてほしい。 我慢せずに。 「仲の良い兄妹だねえ」 マスターが目を細めて言った。 「あの、僕たち、恋人なんです」 「ああ!ごめんよ!お嬢ちゃんがあまりにも若く見えたからさあ」 マスターは申し訳なさそうに彼女を一瞥した。 「いいんです。その通りですから」 だんだんと、空気が重くなってきた。 まずい、どうにかしてこの流れを変えないと。 「ま、マスター!あの、僕、コーヒーお願いします」 「あ、ああ!はい、かしこまりました」 マスターは慌てて頭を下げた。 彼女はというと、平然としてはいるが少なからずへこんでいるようだ。 今にも溜息が聞こえてきそうだ。 「はい、おまちどうさま」 「ありがとうございます」 僕はマスターに微笑んだ。 「心愛ちゃんはどうする?何か飲む?」 「どうしようかな」 「いろいろあるよ?ほら、お茶もあるし、紅茶も」 「うん」 「紅茶は飲めるんだっけ?」 「うん、飲める」 「じゃあ、紅茶にする?」 「うーん、」 「あ、ホットミルクもココアもあるんだ…」 彼女はメニューをしばらくじっと見ていたが、頼むのをやめた。 「頼まないの?勿体ないなあ」 僕がため息をついたのを、彼女は見逃さなかった。 「呆れた?」 「呆れてなんてないよ」 「嘘」 そう言って彼女は、テーブルに突っ伏した。
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