第1章 夢のノロッコ号

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「ひろくんは、イケメンですごくかっこよくて」 「なるほど?」 「しげくんみたいに…」 「重幸にそんなに似てる?」 「うん。結構、似てる」 「そうかな?…って、もしかして、 見た目が重幸に似てるから好きになった、ってわけじゃないよな?」 「違うよ。そんなんじゃない」 「よかった」 「真面目でとても優しくて…」 「そこも似てると」 「うーん、確かに似てるけど…しげくんにはしげくんの良さがあって、 ひろくんにはひろくんの良さがあるの」 「はあ…結局僕は、重幸には勝てないんだな」 僕は溜息をついた。 「違うの、そうじゃなくて」 「いいんだよ、もう」 「ひろくん、怒ってる?」 「怒ってないよ」 「ううん、怒ってる」 「怒ってないって」 「お願い…怒らないで」 彼女は僕の手を握った。 「怒ってない」 僕は彼女の手を握り返した。 「本当に?」 「うん」 「あのね、ひろくんはとっても逞しくて…ほら、こんなに…」 彼女は僕の腕に触れて言った。 「ひろくんに抱き締められると、すごくどきどきするの。 男の人を感じちゃう…」 「僕を誘ってるのか」 「…?」 彼女は首を傾げた。 僕の言っている意味が、理解できていないようだ。 「ひろくん…?それって、どういうこと…?」 「…こういうこと」 僕は彼女を再び壁に押し付け、彼女の頬に両手を添え、唇を強く吸った。 「んっ…」 彼女は僕から逃れようと身をよじったが、僕は彼女を離さなかった。 「もうっ…ひろくんったら」 彼女は、自分の唇を指で押さえた。 「…僕を誘惑した心愛ちゃんが悪い」 「そんな…私、そんなことしてない」 拗ねた彼女も、可愛い。彼女には『可愛い』が溢れている。 「ほーら、続き。心愛ちゃんが思う、僕の好きなところ」 「あっ…うん。ひろくん、優しいけど意地悪なところがあるでしょ? そこも、好き。でも、意地悪ばかりしちゃ嫌。」 「…わかったよ。ほどほどにする」 僕は彼女の髪を撫でた。 彼女は気持ちよさそうに目を細めた。 「結論。私は、ひろくんの全てがだーいすき。」 「…困ったな」 「えっ…?」 彼女は戸惑った。 「…理性を崩した心愛ちゃんが悪い」 「えっ?ちょっと待っー」 僕は彼女の唇を塞いだ。優しく、強く。 「んう、もうっ…!ひろくん、キスばっかり…」 「…僕がキス魔だってこと、忘れてた?」 「うん…」 「忘れないように、何回もしなきゃだめだな」 「もう今日はだめ…!今日はもうこれ以上、だめ」 「なんで?」 「だって…。わかるでしょ?もう、ひろくんの意地悪」 「ごめんごめん。…今日はこれくらいにしとく」 「うん、そうして」 ―やっぱり、我慢できない。 「…いや、前言撤回。我慢できない」 僕は再び、彼女の唇を吸った。 彼女に聞こえるように、わざとリップ音を響かせながら。
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