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「…もう、諦めようかな」
彼女がぽつりと呟いた。
「どうしたんだよ、急に」
僕は俯く彼女を見つめた。
「うん、なんか…私には無理な気がして」
彼女は弱気になっている。
「気を強く持たなきゃ、だめだよ」
「私に、叶えられるのかな…」
彼女は、深く溜息をついた。
―どうしたんだ。あんなに楽しそうに夢を語っていたのに。
どうしても叶えたい夢がある、って目を輝かせながら話していたのに。
あの輝きは、既に消え失せていた。
彼女の目は、輝きを失いつつある。
「心愛ちゃん、だめだよ。そんな簡単に諦めちゃ」
「うん…」
彼女は力なく頷いた。
「どうしても叶えたいって、諦めきれない夢だって、言ってたじゃないか」
「それはそうなんだけど…」
「諦める必要はない。叶えたいんだろ?」
「うん、そうだけど…」
「けど、はなし。自分と自分の夢を信じて、前進あるのみ!」
「うん…」
彼女は最近、元気がない。
どうしたのだろう。一体、何があったんだ。
ノロッコ号が急停止した。それも、不具合ではなく謎の、急停止。
突然、一歩も動かなくなったノロッコ号。
―停滞。
「どうしたの?何かあった?」
彼女は首を横に振った。
「そう…?どんな小さいことでもいいから、何かあったらすぐ言うんだよ?」
「うん…ありがとう」
彼女の声に、元気がない。心配だ。
最近彼女とデートしても、なかなか彼女は笑顔を見せてくれず、
僕は悶々としている。
どうしたら彼女は笑ってくれるのだろう。
どうしたら、彼女の心にかかる霧を、晴らすことができるだろう。
どうしたらー。
僕の頭の中に、一つの考えが浮かんだ。
よし、これだ!これならきっとー
「よし!」
いきなり僕がそう言うので、彼女は驚いた。
「どうしたの、ひろくん」
「行こう」
「行く?行くってどこに?」
「着いてからのお楽しみ」
「えっ…?そんな…教えてよ」
「だーめ。その方が、わくわくするだろ?道中」
「それはそうだけど…ヒントちょうだい」
「…仕方ないなあ。美術館」
「美術館に行けるの…?わあ、嬉しい!どこの美術館?」
「秘密」
「え~、教えてよ」
「だーめ。はいはい、行くよ」
僕は彼女の手を握り、彼女の家をあとにした。
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