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心愛は博人と一緒に並んで、ホームで地下鉄を待っていた。
心愛はちらりと博人を見た。
博人の美しい横顔に、心愛は見惚れていた。
何と美しい横顔なのだろう、と心愛は思った。
「ん?どうしたの?」
博人が前を見て言った。
「えっ?」
「そんなにじーっと、僕を見て」
博人は心愛を見た。
「い、いえ、何も…」
心愛は目を泳がせた。
「そんなに見つめられちゃ、照れちゃうな」
博人はすぐに前を向いた。
心愛は床をじっと見た。
博人は前を向いたまま、心愛の手を握る力を強めた。
心愛は自分の手を握る博人の手を見た。
とても大きく、温かい手だった。
心愛は博人を見つめていた。
ビューンという音がして、地下鉄が目の前を通る。
到着した地下鉄のドアが、落下防止扉に送れてゆっくりと開く。
二人は地下鉄の中へと乗り込んだ。
「どうする?こっち座る?」
博人が左側の緑色の席を指差した。
「ううん、こっちで大丈夫」
心愛は、右側のオレンジ色の席を指差した。
「いいの?優先席座らなくても」
「うん。ひろくんがいるから…こっちでいいの」
心愛は微笑んだ。
「そっか…それならいいんだ」
博人は、心愛とゆっくり腰を下ろしてオレンジ色の席に座った。
二人が座った向かい側のガラスには、行儀よくちょこんと座る心愛と、
背筋をぴんと伸ばして姿勢よく座っている博人が映っていた。
心愛の手を博人が強く握ると、それに応えるように心愛も手を握り返す。
二人はほぼ同時に顔を上げ互いに見つめ合い、照れくさそうに微笑み合った。
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