56人が本棚に入れています
本棚に追加
それは、ぴったり200秒の動画だった。
知らない間に録画してしまっていたらしい。映っているのは白くぼやけた天井だけ。
何でもない会話をする、わたし達。
なのに……涙が出た。
どうしてだろう。
こんな何てことない時間が、幸せで仕方なかったはずなのに。
「うるせーな。そんなに文句あんなら別れりゃいいだろ?」
「はい、そうさせてもらいます」
「あっそ。じゃあね」
どこで歯車が狂ってしまったのだろう。
震える指で、もう一度、再生ボタンを押す。
『キラキラ光るからじゃない?』
『光る? ウロコ?』
『うん。金色に見えるよね。たまに』
『あー、一瞬ね』
二人で過ごした2年半のうちの、たった200秒。もう二度と戻れない、一瞬。
それは、一瞬金色に光る金魚のウロコのように、確かにキラキラと輝いて見えて。
わたしはまるで子供みたいに泣きじゃくりながら、【削除】ボタンを押した。
~END~
最初のコメントを投稿しよう!