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海舟は、土佐勤王党の党員である以蔵が幕臣である海舟に対して不満が有ってそのような態度をとったのだと解釈したのだろう、しかし、以蔵は部屋の隅で頭を下げるばかりで何も言わない。
それを見かねた一人が、海舟の耳元で囁いた。
「以蔵は反っ歯ですキニ・・・人前で喋るのが苦手なもので・・・許してやって下さい」
「おぉそうか・・・」
海舟はそれ以上何も聞かなかった。
「所で皆はどこぞ宿は決まっているのかね」 宴もひらきかけた時、海舟が突然言い出した。
「家茂公に付き添って来たはいいが、京の宿は何処も一杯で幕臣の勝だと言ってもどこも寝床をあけては暮れねぇんで困り果てていたんだが」
「私らは土佐藩邸にでも世話になるつもりでおるのですが・・・」
「先生の宿がないのであれば私らも馴染みの宿に声をかけます故、ご一緒いたしましょう」
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