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数日後、式典に招かれた海舟は又、以蔵に命を救われる。
式年の最中、三人の刺客が海舟に襲いかかってきたのだ。
「先生!むやみに動いちゃなりません!」
以蔵は近くにあった石碑に海舟の背中をおしあてた。
そうして石を背負っていてば相手が斬りかかって来ても、石碑に切っ先があたり、海舟を斬りつけることは叶わないからで、以蔵が下した咄嗟の判断であった。
そして、以蔵は木陰に隠れていた刺客にいち早く気づき、その者に狙いをつけるなり、飛びかかり、一刀両断に首を刎ねてしまった。
「土佐の岡田以蔵じゃ!命のいらん者はワシが相手じゃき!」
以蔵の狂犬が吠えるような様を見て、刺客達はちりじりに逃げていった。
以蔵は海舟の元へ走り寄ると、こう言った。
「先生のお命は一つですキニ・・・大事にせねばいけませんよ」
「あぁ・・・心得た」
この日を境に以蔵は土佐勤王党へ戻っていった。
最強の護衛「以蔵」は、最強の「人斬り以蔵」へと戻っていったのである。
後日、海舟の護衛をした上に、刺客を斬った際に「土佐の岡田以蔵」と名乗ったことで勤王党党首、武市半平太から以蔵は大叱責をうけた。
流石の狂犬以蔵も、半平太には生涯恐れを成し、普通に呼び止められるだけでも首をすぼめビクビクと震えたというので、この時は生きた心地がしなかったであろう。
そして、以蔵と半平太との心に亀裂が生じることとなってゆくのである。
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