俺と黄金の卵

5/7
前へ
/7ページ
次へ
 一日に一つ、決まって朝、アメは黄金の卵を産む。俺は毎日それを(かね)に換え、思う存分遊びほうけた。  やりたい事を全部やった。欲しかったスポーツカーを買い、女遊びに明け暮れ、世界何十周旅行も成し遂げ……。仕事も馬鹿らしくなって辞め、プール付きの豪邸で暮らすようになった。  俺の人生は変わった。素晴らしい。こんなに幸せな奴が俺の他にいるのだろうか?……あ、いたな。最近高い餌を買ってやれるようになった、アメだ。相変わらず黄金の卵を産み続ける。  一度だけ、不満に思った事があった。  何で一日一個ずつしか産めないんだろう。  しかし、そんな考えは消し去る事にした。  小さい頃に読んだ童話であったじゃないか。黄金の卵を産むがちょうを飼っていた親父がせっかちで、がちょうの腹を裂いちまったら、もうそこには何にもなかったって話。  小さいながらに思ったよ。何だよ親父、馬鹿だなあって。がちょうを殺しちまったら、その後貰えた筈の卵も全部パーじゃねえか。  毎朝一個ずつ、確実に黄金の卵は貰えるのだ。別にその原理を知りたいとも思わない。これ以上の幸せを求める必要はないだろう。 「なあ、アメ?」 「コケー!」  こうしてアメは、今日もまた卵を産む。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加