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一日に一つ、決まって朝、アメは黄金の卵を産む。俺は毎日それを金に換え、思う存分遊びほうけた。
やりたい事を全部やった。欲しかったスポーツカーを買い、女遊びに明け暮れ、世界何十周旅行も成し遂げ……。仕事も馬鹿らしくなって辞め、プール付きの豪邸で暮らすようになった。
俺の人生は変わった。素晴らしい。こんなに幸せな奴が俺の他にいるのだろうか?……あ、いたな。最近高い餌を買ってやれるようになった、アメだ。相変わらず黄金の卵を産み続ける。
一度だけ、不満に思った事があった。
何で一日一個ずつしか産めないんだろう。
しかし、そんな考えは消し去る事にした。
小さい頃に読んだ童話であったじゃないか。黄金の卵を産むがちょうを飼っていた親父がせっかちで、がちょうの腹を裂いちまったら、もうそこには何にもなかったって話。
小さいながらに思ったよ。何だよ親父、馬鹿だなあって。がちょうを殺しちまったら、その後貰えた筈の卵も全部パーじゃねえか。
毎朝一個ずつ、確実に黄金の卵は貰えるのだ。別にその原理を知りたいとも思わない。これ以上の幸せを求める必要はないだろう。
「なあ、アメ?」
「コケー!」
こうしてアメは、今日もまた卵を産む。
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