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その2
目を開いた先は、いつもの黒ではなく
白と黒の、色を失ったモノクロの世界
光はあっても色がない
そんな世界
僕は夢でも、色を奪われてしまったのだ
夢の中の僕は、ただあぜ道を進んでいく
モノクロの世界で、横には色を失ったいちょうの並木
美羽はいちょうの木が好きだった
その優しい金色は、自分を温かくしてくれるって
僕がまだ色を持っていた時、そう言っていたっけ
僕はふと立ち止まり、いちょうの木の前に足を運んで
その大きな木の下で、僕はこう願うのだ
美羽の好きな色を、もう一度だけ見せてほしい ―――――
夢は、そこで途切れた
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
僕はゆっくりと目を開ける
しかし、目を開けても世界は黒のまま
やはり色なんて見せてくれない
非現実的で届きもしない思いを、今日もなぜか願ってしまった
ハハッ、なんてバカなんだろう
そう言って自分を笑うのにも、最近慣れた
「おはよう美羽、昨日は仕事お疲れ様。」
「おはよう公人くん、もうご飯出来てるよ。」
「あ、あぁ、今そっち行くよ。」
「無理しないでいいよ。私が手伝うから。」
「・・・毎度すまないな。」
そして今日も、美羽は僕のために
それから結構に月日が経ち
モノクロの夢も、最近は毎日見るようになった
僕は夢の中でも、ただ願うばかり
そして今日も、願いを ―――
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
目を開けると、今度は白と黒のモノクロ世界
「あぁ、ここは夢か・・・」
僕は落胆を交えてそうつぶやいた
僕は夢の中で、再びいちょうの木の前に立つ
そこで目が覚めるまで、僕は願い続ける
―― 色をみせてくれ ――
誰もいない空間で、僕はただ両手を合わせて
無情ないちょうの木に、そう伝えるのだ
――― きみとくん・・・ ―――
ふと不思議な声が、僕の脳裏に響いた
「・・・えッ!?」
僕は驚き、慌てて周囲を確認する
しかし360度見渡しても、声の主は見つからない
――― こっちだよ ―――
再び不思議な声が聞こえた、僕は声の方向を再確認する
どうやらこっちから・・・
・・・えッ・・・?
うそでしょ・・・まさか・・・・
「この木・・・なのか・・・!?」
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