その3

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その3

「この木・・・なのか・・・!?」 ――― そう、呼んだのはわたしだよ ―――― 驚いた いくら夢とは言っても、まさか木に話しかけられるとは 夢はホントにすごいな そう思っていると ――― あぁッ、ちがうよッ!?わたしは妖精さんだよ!? ――― そういうと、いちょうの木の後ろから手のひらほどの小さな妖精が姿を現した 「ようせい・・・!?」 ――― わたしは妖精さんだよ、きみとくん ――― 話しかけられたのが妖精でも、やはり夢ってすごいなぁ たしか僕の名前を呼んでいたよね・・・? 「・・・夢だもんな、いいか。」 ――― きみとくん・・・君はいつも私の前で祈っているけど・・・ ――― その妖精は僕にゆっくりと近づくと、そう僕に尋ねてきた 「あぁ・・・・・僕はとある病気で目が見えなくなって・・・」 「でもせめて、美羽の好きな色だけはもう一度・・・と思って・・・」 ――― ・・・・・ ――― 「夢の中で願うしか、今の僕には方法が思いつかなくてさ・・・」 ――― ・・・・・ ――― 妖精は、ただ黙って僕の話を聞いている 「ハハッ、笑い話だよね。夢の中で願っても、何も変わらないのにね・・・」 そう言って笑う僕の右頬に、流れ落ちる雫の感触が そんな僕に、妖精は口を開いた ――― 君の願いは、とても光っているよ ――― 「・・・えッ?」 少し予想外の返答だった そんなことないよとか、大丈夫だよきっと叶うよとか そんな感じかなと思っていたけど 妖精は、話を続ける ――― きみとくんの願いは、光があって、色があって、綺麗なものさ ――― 「・・・」 ――― それはもう、いちょうの色に負けないくらい ――― 「・・・きれい、か・・・」 ――― だからきみとくん ――― ――― きみの色を、大事にしてほしいな ――― 妖精はそういうと、いちょうの木の奥へ消えて行った ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢  今日の夢は、少し長かったのだろうか 「公人くん、もう朝だよ。」 近くで美羽の声が聞こえた 「美羽・・・すまないな。少し寝坊しちゃってな・・・」 「もうご飯出来てるよ!今日は気合入れて作ったんだから!おいしいよ!」 「あぁ、今行くよ。楽しみだなぁ。」 『 きみの色を、大事にしてほしいな 』 夢での妖精の言葉が、何度も頭を駆け巡る 色を奪われた僕の願いは、負けないくらい輝いていて 僕の願いは、美羽の好きな色ほど綺麗で、あざやかで それは思ってもいなかったことだから 「僕の願いって・・・ ――― 本当は何なのだろう
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