6人が本棚に入れています
本棚に追加
口にするのは易いが、実行に移すのは難しい。堕落とはそういうものだ。
「なんか言った?」と背中の悪魔が言った。
「なんにも」
平日だった。僕は何年かぶりにロードバイクにまたがり、川沿いの道を無心に突っ走っていた。
二人乗り、これも一つの堕落だろう。もっとも悪魔を一人にカウントするなら、だが。
いずれにせよ、いい歳した男が、平日に仕事もしないで遊んでいるのだ。不徳極まりない。
「帰ったら、夜通しゲームして遊ぼうよ」悪魔が耳元で囁く。
「いいよ。でもその前に、部屋の掃除な」
「あれ、堕落に徹するんじゃなかったの?」
「ゴキブリの出る部屋で、放蕩できるか?」
最初のコメントを投稿しよう!