ROOM.No.666

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 口にするのは易いが、実行に移すのは難しい。堕落とはそういうものだ。 「なんか言った?」と背中の悪魔が言った。 「なんにも」  平日だった。僕は何年かぶりにロードバイクにまたがり、川沿いの道を無心に突っ走っていた。  二人乗り、これも一つの堕落だろう。もっとも悪魔を一人にカウントするなら、だが。  いずれにせよ、いい歳した男が、平日に仕事もしないで遊んでいるのだ。不徳極まりない。 「帰ったら、夜通しゲームして遊ぼうよ」悪魔が耳元で囁く。 「いいよ。でもその前に、部屋の掃除な」 「あれ、堕落に徹するんじゃなかったの?」 「ゴキブリの出る部屋で、放蕩できるか?」
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