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殺し屋 × 処刑人
その処刑人は、この前仕事を行った断頭台に立っていた。足元には大きな剣が置かれている。
「……何の用だ」
ずっとまとわりつく気配に嫌気が差して、こちらから声をかける。
「いーやぁ? そんな所にいて何の得になるのかなぁ、と」
歯を見せながら口の端を釣り上げる男がいつの間にかいた。男は台に登っては来ない。
この男は殺しを生業としている。
「余程暇なんだな」
「お前は本当に面白いんでね」
「お前にはこの仕事がどんなに辛いか分かるまい」
「俺だってこの仕事にやりがいを感じたことなんざねぇよ」
「色んな人がいた。でも誰だって俺が知らないところで裁かれ、俺はそれに従って殺すだけだ」
「ふふっ、やっぱり俺とお前は似てるな」
「うるさい」
ほんの少しだけ、処刑人はこの殺し屋と自分は似たもの同士だと思ったことがあった。だが、やはり立場が違う。あっちは、個人の私欲によって人を殺すのだから。
処刑人は、今までに名の知れた者を殺したことも何度もあった。それは町中の皆が望んだことで、彼がその者の首を切り落とすだけで歓声が沸き起こった。
処刑人は自分の時計に視線を移す。長針は、そろそろ明日を告げようとしていた。
そこに、携帯の着信音が聞こえる。
「はい。 ……えぇ、分かりました。 すぐに」
そう短い返事だけして、彼は携帯を切る。そして、足元の長剣を拾い上げる。
「上からの通達があった。 指名手配犯のお前への令状が出た」
処刑人が剣を殺し屋に向ける。
「すぐに有罪が決まって、お前は処刑だ」
「……ははっ」
殺し屋は怖がる素振りも見せずに笑った。処刑人は顔を顰める。そんな彼を見ながら殺し屋が口を開いた。
「奇遇だな、俺もお前を殺せとの依頼が入っていた。 俺が裁かれる前にお前を殺して逃げることにしよう」
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