プロローグ

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プロローグ

「ぜんぶぜんぶ、自分の思い通りになると思ったら、大間違いなんだからーーー!!!」 ぴしゃん、と私が振り上げたグラスからオレンジの液体が跳ねる。 頭からそれを被った水も滴るなんとやら。 綺麗にセットされた髪は崩れ、二重の瞳は大きく見開かれ、さらには口さえも間抜けに空いてしまっている。 仕立てのいいスーツも台無しだ。 (ざまあみやがれっ!!) さっきまで偉そうにふんぞり返っていた魔王のような男の情けない姿に、何とも言えない爽快感に包まれる。 けれど、それも束の間――。 「うるせえ囀りだなぁ?」 地を這うような低い声と共に細められた瞳が、冷ややかに静かな怒りを灯して私を見据える。 そして私は、数秒前の浅はかな行動を後悔する羽目になるのだった。
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