魔王、君臨

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魔王、君臨

ホテルに入ると、なぜか従業員の人たちがすれ違うたびに次々にお辞儀をしてくる。 (高級ホテルってほんとこんな感じなんだ~!?) そわつく私とは違って、湊は慣れた様子の態度。 もしかしたらただの社会人じゃなくて、実はかなりのエリートなのかもしれない。 というか、あんな買い物はそれなりに稼いでないとできないはずだ。 こんなに見た目も良くて中身も素敵で、さらにエリートだなんて完璧すぎて、実はとんでもない趣味とか性癖があっても、驚かない気がする。 だってそれくらいないと、釣り合いが取れない。 むしろそれでも釣り合いが取れてない。 (いっそマザコンで、彼女と二人きりになると赤ちゃん言葉になるとか、部屋の片付けは一切できないとか……いやある意味、片付けできないはギャップでかわいいな) 悶々と考えていると、ホテル内のカフェテリアへと到着する。 「あ、もう着いてるみたいだ」 「どこ?」 「ほらあそこのスーツ、見える? 後ろ姿」 ベージュのスーツの後ろ姿が見える。 細身の男性で、隣には白のワンピースを着た女性がいた。 「何があっても俺に任せて。日南は俺の言うことを信じて頷いてくれればいいから」 「うん、わかった」 (しっかりやるぞ!! 婚約者らしく!) 差し出された腕に手を絡める。 湊への恩義を返すため、私は気合いを入れて一歩踏み出した。
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