妖怪感染!? その1

2/18
96人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ
疑問がわいたら即行動の秋哉が立って行って、春一の部屋のドアをドンドンと叩く。 「ナツキー、どうしたー」 さっきまで食っていたプリンを左手に持ち、スプーンを咥えたままだから、どこか緊張感がない。 しかし、 「待ってろって言っただろう!」 部屋の奥から怒鳴り声をあげる夏樹に、ビクリとすくみ上がる。 ドアを叩く手もピタリと止まった。 とっさに何かを悟った冬依が立ち上がり、パタパタと駆け出し、 「え? どうしたの冬依くん」 おろおろ鈴音に何も言わず、春一の部屋の前に何かを持って戻ってくる。 「冬依くん、それって……」 鈴音は顔色を変えた。 冬依は、 「夏兄、開けて。救急箱を持ってきたよ」 部屋のドアをノックしながら、 「春兄が怪我をしたんでしょ。隠そうたって鈴ちゃんに心配かけるだけだよ」 「なっるほど。やっぱ頭いーなトーイ」 脳天気な秋哉に、冬依はちょっとイヤな顔をする。 「秋兄、ちゃんと考えて。春兄と夏兄がやられて帰ってきたんだよ。そんなの生半可な敵じゃない」 秋哉の眼前に指先を突きつける。 「次はボクたちの番なんだからね。ボクがだまし討ちするから、秋兄は頑張ってオトリになってよ」 「お、おお……」 もちろん兄たちがやられて黙っていられる自分たちではないが、さっそく報復を考えるところは、さすが冬依だ。 しかも正々堂々とだまし討ち宣言。 その上、秋哉の役割は、きっぱり。 元より兄たちが敵わなかった相手に、自分たちが真っ当に向かっても敵うわけないが、それでも卑怯なことをしてまで勝ちたいとも思わない。 それに何より、信じられないのだ。 「なあ、ハルたちをやったのって本当に人間なのか? どっかの動物園から逃げ出したライオンとかゴリラなんじゃねぇ」 その方がよっぽど納得出来る。 秋哉の中では、兄たちは完全無敵の最強コンビだ。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!