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たまらず、秋哉は着ていたシャツを乱暴に脱ぎ捨てる。
再びカズエに覆い被さろうとしたその瞬間、
「キャー!」
いきなりカズエが悲鳴をあげた。
目の前で風船を割られた犬みたいに秋哉はびっくりして、動きを止める。
さすがにちょっと心臓が止まりそうになった。
動揺を隠せないまま、
「えっと……、何?」
と聞くと、
「それっ、……それって一体なんなの」
カズエの声はあからさまにぶるぶると震えていた。
カズエが指しているのは、自分の体だ。
「ん?」
と見下ろして、
「ああ……」
なんだ、と軽く笑う。
秋哉の体は所々、見るも無惨に赤く腫れ上がっている。
全身が痣だらけのように見える。
だけど、実は違う。
「これな、毛細血管が切れるとこうなっちまうんだ。飛行機ん中でGがかかるとどうしても、な」
戦闘機乗りなら常識的な通過儀礼なので、別に気にも止めていなかった。
顔や体の毛細血管が切れて、鬱血するぐらいならまだマシな方で、中にはGに絶えきれず失神してしまう者さえいる。
「見た目はアレだけど、別に痛いわけでもなんでもねーぜ。むしろ治りかけはかゆいくらいで……」
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