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秋哉の場合
カズエが、
「あーん」
と差し出した箸にパクッと食いついて、
「うん、美味しいよカズエちゃん」
と微笑むのは冬依だ。
フランスのモデル業界でも天使の降臨と評される冬依の美しい微笑みに、カズエも思わずぽっと頬を染める。
「そんな、グルメの冬依くんに褒めてもらえるなんて、……恥ずかしいよ」
「恥ずかしがる必要なんてねーよ」
そう言いながら親しげにカズエの肩を抱くのは、
「――夏樹さん」
カズエとおそろいのエプロンをした夏樹。
こちらも格好はアレだが、身に纏う色気にまったく影響はない。
夏樹からほんのり香ってくる甘い匂いに、カズエの頭はクラクラした。
この兄弟は本当に、いつ見てもちょっと心臓に悪い。
綺麗すぎて怖いくらいだ。
「カズエちゃん、もうひとくちちょーだい」
冬依に催促されて、カズエはまた料理を箸でつまむ。
すると、
「おい、冬依ばっかずりぃぞ」
夏樹はぐいと腕に力を入れて、ますますカズエに顔を近づけてきた。
「次は俺の番だろ」
至近距離で微笑まれるこの迫力は、本当にヤバい!
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