秋哉の場合

4/4
97人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ
通話なんか切られた日には、この後カズエがふたりに何をされるかわかったものではない。 秋哉だって気になって気になって……、今すぐにでも官舎を飛び出してしまいかねない。 でもそれは、懲戒免職ものの重大な規則違反なので、実行するわけにもいかなくて……。 「……ゼッテーに、電話を切るんじゃねーぞナツキ」 仕方なく歯噛みしながらそう言うしかない秋哉に、 「リョーカイ。アキはそこで黙って見とけ」 夏樹は残酷に言い放った。 「さあカズちゃん。料理の続きをしようか」 今度は背中を抱いて、これ見よがしにエスコートしていく。 冬依まで画面に顔を近づけてきて、 「そうそう。カズエちゃんのことはボクに任せて」 ニコリと微笑む。 「ボクが責任持って美味しくいただくから」 「!」 「おっと、料理の話ね――」 焦る秋哉に完璧なウインクをひとつ寄越して、楽しそうにふたりの後を追っていく。 「……ぬぐぐぐぐ……」 声にならないうめき声をあげながら秋哉は、手の出せない場所からおとなしく見守るしか術がないのだった。      ――了――
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!