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眠る潤をそっと預かりながら、鈴音に、
「もう泣くな。とにかく春は無事だったんだから」
鈴音は慌てて夏樹を振り仰ぐと、
「な、泣いてないよ」
確かに鈴音の頬に涙はないが、泣きそうなくらい心配していたのは見ていればわかる。
夏樹は呆れたように息をついて、
「次は俺が行くから」
眠る潤を引き受けた。
「鈴音はとにかく春にくっついてろ。鈴音が掴んで離さなきゃ、春も無茶はしねぇよ」
「でも私、夏樹にも危ないことはして欲しくないよ」
鈴音の言葉に夏樹の肩がピクリと揺れる。
潤を抱く腕にキュッと力が入った。
鈴音はその時の夏樹の表情に気づいていない。
気づく前に夏樹は言った。
「……俺は、潤の王子様だぞ」
夏樹は顔をあげず、眠る潤だけを見つめている。
「春とは違う。潤に泣かれない華麗な見せ場にしてやるさ」
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